節税を意識して退職金を支払うメリット4つ
- 原 アカシアデザイン
- 2024年5月16日
- 読了時間: 4分
退職金は、払い方次第で大きな節税効果が得られることがあります。
退職金を支払うことのメリットと注意点をご紹介します。
退職金4つのメリット
退職所得控除が大きい
退職金の税金を計算する際、一定金額を所得から控除することができます。勤続年数により計算式が異なり、
勤続年数が20年以下 勤続年数×40万円(最低80万円)
勤続年数が20年超 (勤続年数-20年)×70万円+800万円
となります。例えば、
勤続年数が5年の場合は、5×40万円=200万円
勤続年数が25年の場合は、(25年-20年)×70万円+800万円=1,150万円
が退職金から控除されます。
退職所得控除を引いた金額の1/2にしか税金がかからない
メリット1で計算した金額を使うと、
勤続年数5年で、退職金300万円もらった場合 (300万円-200万円)×1/2=50万円に税金がかかります。
勤続年数が20年で、退職金1,500万円もらった場合 (1,500万円-1,150万円)×1/2=175万円に税金がかかります。
1/2にすることで大幅に税金が減りますので、大きなメリットです。
社会保険がかからない
役員報酬や給与で支払った場合、会社負担分と従業員負担分で合わせて最大約30%の社会保険料がかかりますが、退職金には社会保険がかからないため、手取り額が増えます。
他の所得と合算して計算しない(分離課税)
退職金をもらうときまでに「退職金の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、源泉徴収だけで税金の計算が終わります(これを分離課税といいます)ので、基本的に確定申告をする必要はなくなります。
所得税は累進課税といって所得が多いほど税率が高くなります。
しかし、退職所得は単独で税金を計算しますので、結果として低い税率になることが多くなることが特徴です。
退職金3つの注意点
計算が難しい
役員の退職金はいくらでもいいという訳ではなく、適正な金額にする必要があります。極端に高い金額にすると税務調査で経費と認められない可能性があるということです。
退職金を計算するにはいろいろな方法がありますが、一般的には「最終月の役員報酬月額×役員に就任していた年数×功績倍率」で計算します。功績倍率は社長の場合、「3」程度とされていますが、明確な基準はありません。同業他社の功績倍率を調べるなどして、根拠を説明できる倍率にしておく必要があります。
また、最終月の役員報酬月についても注意が必要です。
たとえば、「毎月40万円の役員報酬だったのを、最終月だけ100万円にする」とした場合、退職金を増やすために上げたと税務調査で否認される可能性が高いです。役員の退職金は、退職の経緯・会社に対しての貢献・会社の規模などにより総合的に判断されますので注意しましょう。
役員の勤続年数が5年以下の場合は1/2ができない
役員の勤続年数が5年以下の場合、上記メリット2「退職所得控除を引いた金額に1/2にしか税金がかからない」でお話しした1/2がなくなってしまいます。
これは、公務員の天下りを規制するために導入されたのがきっかけですが、一般企業の役員にも該当しますので注意してください。
実際に退職したかどうか
退職するということは、その会社の業務から離れることを意味します。いったん退職という形をとり、その後も会社の業務にかかわるなど、会社に大きな影響力を与えている場合は退職していないとみなされ、否認される可能性があります。
たとえば、社長を退職して会長に就任したものの、会社の代表権はそのまま会長が持ちつづけている場合は、退職したとはならない可能性が高いでしょう。
また、会長の役員報酬が社長時代のまま変わらない場合も、同じく退職したとはならない可能性が高いです。
おおむね50%以上減額していないと退職したとはみられない場合が多いです。

まとめ
退職金のメリットや注意点をご紹介しました。
退職金をうまく利用すれば大きな節税につながりますが、細かい制約が多いため注意が必要です。
このページでは大ざっぱに説明していますが、実務上は細かい条件から判断する必要があります。
退職金の支給を考えている方は、税理士などの専門家にご相談ください。
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